NICEプログラムには、学修デザインに役立つ各分野の入門書を集めた「NICEライブラリー」があります。
毎月、ライブラリーから選んだ本を中心に「今月のおすすめ」として紹介しています。
4月のおすすめは、『手紙社のイベントのつくり方』です。
『手紙社のイベントのつくり方』は,手紙社の代表を務める北島勲さんが,
自社のイベント運営のノウハウをまとめた一冊です。
手紙社は,イベント主催,そして「手紙舎」名義での雑貨店,カフェ経営を3本柱とする株式会社です。
「東京蚤の市」や「紙博」,「布博」といった大規模イベントを年間数回開催するほか,
関東圏を中心に国内7店舗,海外(台湾)に1店舗を展開しています。
手紙社の部員制度(会員制度)やイベントサポーター制度(ボランティアスタッフ)は,
その確立された世界観に共感する人たちによる,熱い思いで支えられていると言ってよいでしょう。
さて,それほどまでに人を熱くさせる手紙社とはどんな会社なのか,
またそのイベントはどのように運営されているのか。
それを明らかにする本書は,以下のような構成となっています。
プロローグ
第1章:手紙社って何?
第2章:手紙社のイベントの核心
第3章:イベント成功のためのアイデア
第4章:誰でもできる強いコンテンツのつくり方
第5章:イベント主催者だけに通じるQ&Aと用語辞典
エピローグ
手紙社年表
本書のタイトルともなっている「イベントのつくり方」に対応するのは,第2~4章です。
第2章は「核心」とあるように,チームづくりやスケジュール管理,外部リソースの使い方,会場の確保,
会場のブースレイアウト,ネーミングや広報用デザイン,収支試算,SNSプロモーションなど,
イベントの計画から当日運営まで包括するノウハウが書かれています。
一方,第3章は,いわゆる事例紹介です。
手紙社が手掛けた数々のイベントについて,イベントの到達目標とともに出展者数や入場者数のデータが示され,
イベント成功の要因などが分析されています。
第4章は,イベントの三大要素「① コンテンツ,② スケジュール管理,③ プロモーション」のうち,
北島さんが最も重要なものとして挙げている「① コンテンツ」づくりについて,
3本柱戦略(ひとつの項目だけではダメ,柱となる3つの項目が組み合わさることで,コンテンツが魅力的なものになる)や,
日々のインプットの重要性など,主にマインドのありかたと言えるものが述べられています。
本書には,イベント運営に関する物心両面でのコツが詰まっています。
ですが,この本がいわゆる「ハウツー本」とは決定的に異なるのは,「滋養を得た」とでも言うべき,
独特の読後感をもたらすことです。
それは,自社の世界観を守ろうと奮闘し,よいものを作ろうとギリギリまで粘る人たちの
熱い思いに触れたことに由来するように思えます。
本書は,地域活性化策のひとつとして「フェス」の開催を念頭に置いている人におすすめです。
また,マイナーで学ぶことの幅を広げることに難しさを覚えている人には,
「3本柱戦略」がそのハードルを越えるためのヒントになるのではないでしょうか。(神田 麻衣子)