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おすすめ英語学習法 

manga多読で英語学習



 日本の英語教育の致命的な欠点の一つは、学習者が接触する英語の絶対量がきわめて乏しいという点です。しかも,一歩教室の外に出てしまえばほとんど英語を使わずにすんでしまう。平均的な大学1年生はまだまだ英語学習の初級後期~中級初期の段階にいると考えられるので、まず必要なのは,十分な量の良質な英語をインプットするということ。それには、多読、多聴しかありません。

 これまで学校で受けてきた授業のやり方、つまり、必ずしも興味が持てるとは限らないお仕着せの教材・テキストに即して、精読を旨に辞書を最大限活用して一字一句ないがしろにせずに完璧に理解する、といった学習法もそれなりに重要ですが、ともすると「木を見て森を見ず」式の瑣末主義に陥ってしまい、文章を読むことの本来の目的とは全く異なった方向に行ってしまいがちです。

 読書の目的はいろいろですが、そのうちの一つが,我を忘れて読み耽る楽しみでしょう。それを完全に保証してくれるのがmanga読書です。日本の優れたマンガの多くが英語に翻訳されて海外で出版されており、日本でもamazonなどから手軽に入手できます。大学生の多くは、子どもの頃から恒常的にマンガに親しんできているので、マンガ・リテラシーは十分に備えているはずで、しかも、かつて読んだことのあるマンガなら内容をおぼろげながらにでも覚えているでしょうし、何よりも、もともと日本人向けに書かれているのだからそこに描かれているストーリーも登場人物も我々日本人に非常にとっつき易い題材だし、娯楽として作られているのだから面白さの点では折り紙付きだし、と、良いことずくめのmanga を英語の多読に使わない手はないのです。一冊の総語数も、6千語~1万語程度のものが多く、一分間に100語の速度で読むとしても1~2時間ほどで読了できます。セリフが主体で進行するので、自然な話しことばに自然な文脈で触れることができるという点でも、一般の英語教材に勝っています。ただ,学校では習ったことのない口語表現や俗語表現が頻出するため、よくわからない言い回しなどに出くわすことも多いですが、その表現が使われている文脈を挿絵が補ってくれるので、それを頼りに意味を推測できるのもmangaならではの強みです。それに,セリフを100パーセント理解しなければならないこともないわけで、少しくらいわからないところがあっても話の筋を追って行ければそれで良しとする思い切りのよさが何より大切です。

 まずは、自分の好きなマンガの英訳版を手に入れて読み始めてみましょう。多読の原則である、「辞書を引かない、分からなければとばす、つまらない本はすぐ止める」を守って、とにかく1冊読み通してみることです。不明な部分をどうしても解決したければ、日本語版と突き合わせてみてもよいでしょう。

 大切なのは、楽しんで英語を読むということ、この一点に尽きます。下線部を訳せとか、この代名詞の内容を答えよとか、そんなつまらないことに答えるために英語を勉強しているわけではないのです。もちろん、資格試験の点数を上げるために勉強をしているわけでもありません(だから,TOEICの点数なんぞに一喜一憂する必要もありません)。とにかく、ことばを使って他者とコミュニケーションを図ったり、必要な情報を収集したり、本やマンガを楽しんだりすることができるようになることが、外国語を学ぶ究極の目的だということを忘れないように。

 以下の本が大いに参考になります。

古川昭夫・宮下いづみ 『Mangaで楽しく英語を学ぶ』 (小学館,2008)
金谷憲 『忙しい人の多読トレーニング・メニュー』 (IBCパブリッシング,2005)
酒井邦秀 『快読100万語!ペーパーバックへの道』 (ちくま学芸文庫,2002)

 また、私が書いた以下の紹介文も参考にしてください。

成田圭市 「英語読書の薦め」 新潟大学生協書評誌 『ほんのこべや』 28号 (2005), 26-31.
成田圭市 「manga読書の薦め」 新潟大学生協書評誌 『ほんのこべや』 34号 (2008), 19-27


(成田圭市 先生)