おすすめ英語学習法
英語の効果的な学習方法
以下に本学1年生向けに大学での英語学習法をアドバイスします。
皆さんは中学と高校で教科としての英語を6年間学びました。大学入学後の英語学習は高校時代とどう異なるでしょうか。その第一は授業時間です。高校ではほぼ毎日英語の授業がありましたが、大学の英語は週1~2回程度です。英語に限らず外国語学習で最も大切なことは、その外国語にできるだけ触れることです。すると大学で英語力を伸ばすためには、授業時間以外に英語を学ぶ機会を皆さん自身で確保することが重要だということになります。
高校英語と大学英語の違いの第二はその目的です。中学と高校ではいろいろな場面で幅広く英語を使えるように勉強してきました。これを一般目的の英語(English for General Purposes, EGP)と言います。大学ではこのEGPを土台にして,特定の分野で英語が使えるようになることを目的に学習します。こちらは特定目的の英語(English for Specific Purposes, ESP)と呼ばれます。ESPには医学英語などの学術目的の英語とビジネス英語などの職業目的の英語があります。
皆さんがこれから伸ばしたい英語の力は学術目的の英語ですか、それとも職業目的の英語ですか。前者であればどの学問の英語ですか。後者であればどの職業の英語ですか。また高校までのEGPはどうしますか。さらに伸ばしたいですか。新潟大学はこれらの目的にかなう授業を全学英語や学部・大学院の科目として開講しています。大学での英語学習とは、自分で学習目的を決定して、こうした授業を活用しつつも授業以外の自主学習を計画的に進めて目的に到達するものと考えましょう。
以上のように、大学の英語学習では学ぶ時間も学ぶ目的も皆さんが自分でコントロールすることになります。これまで皆さんの英語学習の時間、目的、教材、学び方、評価法は中高の英語の先生方が支えてきました。大学ではこれらの大部分が皆さんに移ります。これは大学生の特権です。好きな時に好きな英語を好きなように学べるのです。しかしこの特権を上手に行使しない場合は悲惨な結果が待ち受けています。自分の努力不足により、ESPはもとよりEGPでさえも高校時代のレベルより下がった状態で大学を卒業するはめになります。
そうならないためには皆さんが自律した学習者(autonomous learner)として学ぶことが大切です。自律した学習者は学習の目的を自分で決定し、教材や方法を自分で選んで計画を立て、その計画に沿って学習を行い、その成果を評価し、結果を見て必要な変更を加えます。
大学での英語学習は学部の4年間のみならず大学院や卒業後も視野に入れて計画しましょう。まず目的の英語ができるようになっている自分を想像します。「科学英語の論文をすらすらと読んでいる自分」でしょうか,それとも「看護師のための英語を流暢に使っている自分」でしょうか。このように目的を視覚化できたら、次にそれを達成するための授業、自学用教材、時間、場所などの学習環境を自ら整備して意欲的に学び続けます。これが自律した学習者の姿であり、皆さんに勧める学習法です。
英語の学習はEGPでもESPでも、言語材料と言われる発音・語彙・文法を習得し、聞くこと・話すこと・読むこと・書くことの四つの言語技能を伸ばすことがターゲットです。(他に英語の論文を読んでその要点を日本語でまとめたり、日本語で書いた下書きを英語にしてスピーチをしたりするなど、英語と日本語の間を行き来するメディエーションという第五の言語技能も学習対象になります。)
自律した学習者は自分の学びを絶えず監視し、言語材料や言語技能の学習で伸びなやんだり学習意欲が減退したりした際は、級友や先生に助けを求めて窮地を脱出するようにします。これをメタ認知ストラテジーと言います。幸いなことに、最近ではインターネットで単語の覚え方やスピーキング練習法などの外国語の学習スキル、それにTOEICやTOEFLなどの英語試験の準備の仕方や海外留学などについての情報が容易に得られます。こうしたリソースを活用して大学での英語学習を着実に進めましょう。
(松澤伸二 先生)