異文化と技術
海外や英語へのハードルを下げるチャンス
2024.02.22
科目概要
平成8年度から工学部を中心に、ドイツ・マグデブルグ大学との間で「夏の学校」を開催している(隔年でドイツと新潟とで開催)。2023年度は学生をドイツへ派遣する年であり、受講者はこの「夏の学校」に参加して、マグデブルグ大学にてドイツ語とドイツの科学技術について学ぶと共に、ドイツ人学生と交流する。その国の言語・文化・科学・技術・生活等を、特に自然科学系の研究室や工場の見学を通じて学ぶと共に、現地の学生との交流を体験することを目的としている。
※日本人学生の場合、初修外国語としてドイツ語(相手国の言語)を受講していることが望ましい。教員並びに学生との会話は全て英語で行われるので、英語の会話能力が必要である。また、工学系の研究室や工場を見学することを中心とするため、科学技術について興味と基礎的な知識を持ち、英語またはドイツ語で質問できることが望ましい。
【注】ここでインタビューした受講生の方は初修外国語がドイツ語ではありませんでしたが、そこまでの苦労は感じなかったそうです。
キーワード ※受講生があげたキーワード
異文化と技術(受講後に感じたことは、まさにこの授業名の通り) 異文化体験 科学技術発展の追体験 英語
スケジュール
令和5年度
事前学修
事前の説明会に出席し、ドイツでの訪問先についてまとめ、英語でプレゼンテーションとレポートを提出する
学外学修
8月末~9月頃に2週間程度/マグデブルグ大学で開講
・大学内研究室見学
・工場見学
・文化・歴史施設見学(マグデブルグのほか、ブランケンブルク・ライプツィヒ・ポツダムなど)
・ドイツ語会話の授業 など
事後学修
学修成果を英語でのプレゼンテーションとレポートで発表する
(内容はドイツの受入先担当者にも共有される)
受講生の声(自然科学研究科博士後期課程 1年次)
異文化と技術
- 授業をとったきっかけは何ですか?
- 私の専門は工学の機械系で、流体工学を研究しています。
学部生時代に、工学部のG-DORMプログラム(*)に参加してベトナムへ行き、現地の学生と活動したことがありました。その時の経験で、本やインターネットで知ることと、現地で感じることとの間に大きな違いを感じました。この授業には、先進国であるドイツの様子を実際に見てみたいとの思いで参加しました。ベトナムで海外経験があったので、参加に深く悩むことはありませんでした。
受講生は学部生から大学院生までいましたが、私と同じように、日本以外の国を経験から学ぶ目的の学生もいれば、これまで学んだ自分の英語を活用することを目的にした学生もいました。
- ドイツの訪問先ではどのような活動をしましたか?
- 訪問先のマグデブルグでは、基本的に英語でコミュニケーションが行われます。
大学の研究室見学では、工学や医工学といった様々な専門分野の教員・学生から説明を受け、それに対する質問を行うこともできました。それらの質問に丁寧に答えていただき、自分の専門以外の研究であっても、理解を深めることができました。また大学だけでなく、複数の都市で博物館や歴史施設の見学といった活動も行いました。ここでも引率してくださるドイツの大学の方が解説をしてくださり、ドイツの歴史や科学技術発展を追体験することができました。加えて、ドイツ語を学習する講義もあり、基礎レベルのドイツ語会話を習得する機会もありました。
基本的に現地でのプログラムは受講生全員で行動しますが、週末にはホームステイの機会もあり、そこでは1人ずつ分かれて各家庭に滞在します。ここで行う内容は事前に決められておらず、各ホームステイ先の家族と学生が相談をして決めます。実施が週末なので、学習よりもハイキングや地元のお祭りへの参加といった、ドイツでの一般的な休日を体験するというものになっています。
- 受講してみて良かった点や、今後に役立てたいことは何ですか?
- ベトナムに行った経験でもそうですが、海外で何か活動することに対しての心理的なハードルが下がりました。行く前は、海外に対して、様々な思い込みによる漠然とした恐怖のような感情がありましたが、実際行ってみると、行く前に感じていた不安が杞憂だとわかりました。海外に行くことに対して腰が重い人が多くいると思いますが、私はこの授業を経験して、今後は躊躇せずに行動できると思えるようになりました。
本やインターネットで伝え聞く情報は断片的であり、また偏見も入ってしまいます。その結果、海外の人々は私には理解できない考えを持っていると感じ、それが漠然とした恐怖につながっていました。現地で実際に活動してみて、ドイツの方、さらに言えば、他の文化背景を持つ人々は、ある事象を私とは違う角度(考え方・優先順位)で見ているだけで、根本は同じではないかと感じられました。この考え方が、海外に対する漠然とした恐怖を解消しました。
- 受講して大変だったことは何ですか?
- 英語でのコミュニケーションに苦労しました。特に最初は完璧に話そうとし過ぎて、あまり質問やコミュニケーションができず、後悔しています。多少文法が間違っていても、誰も怒る訳でも笑う訳でもありません。いざとなれば、コミュニケーションは言葉以外でもできます。数日目からはそう思えるようになりましたが、最初から変に考え過ぎずに積極的にコミュニケーションをとろうとしていれば、もっと今回のプログラムから得られるものがあったのではないかと思います。
- 担当教員はどのような人でしたか?
- 清水先生は面白い先生です。英語も堪能で、研究に対してもユニークな視点を持っています。困った時に何でも助け舟を出してくれる訳ではないですが、決して学生を放置もしません。心強く、頼りになる先生です。
- ドイツで交流した方々はどんな様子でしたか?
- 皆とても親切でした。ドイツは工業国で職人気質というイメージがありましたが、日常会話や質問などに対しても、皆いつも気さくに丁寧に答えてくれました。
ただ、サッカーに関しては、とても熱くなる方が多く、週末にマクデブルグで試合が開催される際は、スタジアム外まで歓声が響いていました。
- どのような人におすすめですか?
- 学部4年生以上の学生にお勧めします。工学的な知識を体系的に得たうえで参加すると、見える景色が違ってきます。特に進学予定の学部4年生は進学までに海外経験を得ることで、海外への抵抗をなくしておくと、進学した際に、国際学会への参加などで躊躇することもなくなり、研究室でのチャンスを掴みやすくなると思います。
また1~3年生であっても、早くから海外を知り、異なる視点を得ることはよいことだと思います。多くの視点を得ることで、講義で学んでいることの先に何があるのか?何故それを学ぶのか?他の知識とどう繋がるのか?など、全体が俯瞰でき、普段の講義の見え方も変わってくると思います。
中長期の留学などを考えている人は、学年を問わずおすすめします。海外で生活し、また研究にかかわるコミュニケーションをするよい機会になると思います。実際に留学を開始する前の入門科目としてこの講義に参加するのはいかがでしょうか。
後輩へのメッセージ ※受講学生アンケートより
ぜひ、勉強に関してだけでなく、様々な視野を海外経験で広げてほしいです。外の世界を知ることで、日本のことや、いま学んでいることもよく見えてきます。海外に行くかどうか悩んでいるくらいなら、まずは参加してみましょう。
担当教員からのメッセージ
感想を読んでみて、この科目の意図することが十分に伝わったことがわかって嬉しく思います。最初のガイダンスで説明した通り、この科目のねらいは次の通りです。
●海外留学への心理的バリアを下げる:「まずは行ってみる」→長期の海外経験への第1歩
●専門の軸足をしっかり持って参加:専門の視点でものを見ると一般人(観光)とは違ったものが見えてくる→自分の専門を高度化するきっかけ
●国際語としての英語は日独双方にとって外国語:どうやったら伝えられるかの相互努力→さらなる英語学習への動機づけ
教員が助け舟を出すかどうかは状況次第、自分で乗り越える経験を積ませるか、本当に助けが必要な状況か、で決めました。危機管理に該当するもの(今回は往路の飛行機乗り継ぎ地の台北にちょうど台風が来る可能性があったこと、現地で乗り継ぐはずの列車がいきなり運休になったことなど、危機管理を必要とすることがありました)は教員が対応します。ホームスティ先で全く日本語が通じない環境に一人で置かれるような場合は、自分で何とか切り抜ける経験を積む機会としてください。
2024年度は逆にドイツ・マグデブルグ大学から学生が「異文化と技術」(夏の学校)のためにやってきます。ぜひこの夏の学校に参画して、逆に日本の技術や文化を外国人に説明する経験を積んでください。
参考リンク