異文化と技術
動きながら学ぶ異国の文化-身体も脳みそもフル回転ー
2024.02.06
科目概要
平成8年度から工学部を中心に、ドイツ・マグデブルグ大学との間で「夏の学校」を開催している(隔年でドイツと新潟とで開催)。2023年度は学生をドイツへ派遣する年であり、受講者はこの「夏の学校」に参加して、マグデブルグ大学にてドイツ語とドイツの科学技術について学ぶと共に、ドイツ人学生と交流する。その国の言語・文化・科学・技術・生活等を、特に自然科学系の研究室や工場の見学を通じて学ぶと共に、現地の学生との交流を体験することを目的としている。
※日本人学生の場合、初修外国語としてドイツ語(相手国の言語)を受講していることが望ましい。教員並びに学生との会話は全て英語で行われるので、英語の会話能力が必要である。また、工学系の研究室や工場を見学することを中心とするため、科学技術について興味と基礎的な知識を持ち、英語またはドイツ語で質問できることが望ましい。
キーワード ※受講生があげたキーワード
語学 技術
スケジュール
令和5年度
事前学修
事前の説明会に出席し、ドイツでの訪問先についてまとめ、英語でプレゼンテーションとレポートを提出する
学外学修
8月末~9月頃に2週間程度/マグデブルグ大学で開講
・大学内研究室見学
・工場見学
・文化・歴史施設見学(マグデブルグのほか、ブランケンブルク・ライプツィヒ・ポツダムなど)
・ドイツ語会話の授業 など
事後学修
学修成果を英語でのプレゼンテーションとレポートで発表する
(内容はドイツの受入先担当者にも共有される)
受講生の声(工学部 4年次)
異文化と技術
- 授業をとったきっかけは何ですか?
- シンガポールで研修を受けたり、父の仕事の関係で韓国へ訪問したりした経験があるので、アジアの文化には触れたことがありましたが、アメリカやヨーロッパに行ったことはありませんでした。今回先生からのメールで、このプログラムが、自分の専門分野(機械システム・再生可能エネルギー)に関連することやドイツの文化を学べることを知り、受講を決めました。
- ドイツの訪問先ではどのような活動をしましたか?
- 大学内では、ドイツ語を0から学ぶドイツ語クラスが5、6回程ありました。
ラボツアーでは、機械・電気・情報・医療系の研究室で最先端の技術を英語で聞いて学びました。日本から引率してくださった機械系の先生が翻訳してくれ、私たちが質問をしやすいようにしてくれていたのですが、3日後、その先生が帰国してしまったので、皆で協力しながら機械系の単語を頑張って聞き取りました。耳を慣らすという意味でも大変勉強になる、いい環境でした。
現地の見学では、印象深かったところがいくつかあります。
1つ目は、レーゲンシュタイン城という古城です。最寄り駅まで2時間位かけて電車で行き、山を1時間半登るハイキングをしました。その頂上の崖に建つお城で、日本とは全く違う石造りの美しい城でした。
2つ目はライプツィッヒという町です。ドイツのナポレオン支配が終わった歴史の戦いが起きた所で、その記念碑がありました。とても大きい石造りのヨーロッパを感じる建物でした。狭い螺旋階段をみんなでバテながら登りました。また、近代的なビルの隣に、外装だけバロック式の中世ヨーロッパの造りの建物が並んでいましたが、その建物の中はショッピングモールという不思議な空間を楽しみました。
3つ目は、ホームステイ先のゴスラーという町です。基本的には寮に滞在しているのですが、2週間のうち1週目の週末3日間は、ホームステイでした。ホームステイ先の方が建設したテーマパークで遊んだり、鉱山の廃坑で地下100メートルまで潜っていくツアーに参加したり、フェスでお酒を飲みながらバンドの演奏を聴き踊る人に混ざったりと「海外に来たな」という感覚を味わいました。
- 受講してみて良かった点は何ですか?
- 1点は、自分の専門に関わることです。風車(町中に多く見られる)が作るエネルギーから水素を取り出し有効活用するサイクルがあることを知り、技術的な面で驚きを受けました。
もう1点は言語能力です。1週目は、日本人の方と助け合いながら、英語と日本語を使いながら英語に慣れる、その後のホームステイ3日間は、各家庭に1人ずつになるので、完全に英語かドイツ語しか使えない状況が起こります。翻訳ソフトを使わず、知っているボキャブラリーからひねり出す気持ちで頑張っていたら、残りの1週間は自分から話せるようになった気がしました。日本語が全く使えない環境で試してみるのが大事なんだなと思いました。
- 今後に役立てたいことは何ですか?
- 現在、自分が所属している研究室の先生はインドの方で、会話は基本的に英語です。留学に行く前は、自分の研究に関する単語が難しいこともあり、自分の報告に対して先生から返されたことが理解できないことがありました。このプログラムを通して、自分から単語を勉強し、自分からアタックしないとコミュニケーションはできないと分かりました。日常会話は留学前に比べて自信をもってできるようになったので、研究技術的な内容でもしっかりディスカッションできるように、大学院でも英語を学んでいき、国際学会に出られたらいいなという気持ちでいます。
- 受講して大変だったことは何ですか?
- 今回のプログラムでは、12人の日本人がいたうち10人が体調をかわるがわる崩してしまいました。2週間、午前中は授業を受け、その後ずっと移動し歩き回ったので、身体的負担が大きかったです。それに加えて外国という目に見えない緊張感があったのだと思います。
- 担当教員はどのような人でしたか?
- 清水先生はとても誠実な方です。当たり前にある電車の遅延や急な運休にもすぐ対応してくれとても心強かったです。また、多くの学術的な知識をもっている方です。ラボツアーの時はとても頼りになりました。
- ドイツで交流した方々はどんな様子でしたか?
- 現地の担当教員は、分かりやすい英単語やスピードで説明をしてくださったので、内容がすっと入ってきて楽しむことができました。対応してくれた学生たちは皆優秀でした。その中に、卒業していて、アルバイトしながらワークホリデーをするという人がいて自由だなと感じました。
また、閉館後の図書館のガラスの前で、趣味のダンス練習を1人でしていたら、現地の大学生から、声を掛けられ、一緒にバレーボールをしたりお酒を飲んだりといった交流もありました。寮内でもすれ違うと、全然知らない人でも話し掛けてきてくれて、一緒にダンスをしたこともありました。フレンドリーに接してくれる人が多かったというイメージですね。
- どのような人におすすめですか?
- 1人で行く長期留学と違い、団体で引率の先生もいる、かつ、プログラム内容が決まっているので、安全に、しっかりと文化を学ぶことができます。海外が初めてで怖いと思っている人にお勧めします。
また、英語以外の違う言語に触れてみたい人にもお勧めです。ドイツ語→英語→日本語と翻訳するサイクルが1つ多くなるので、多言語を学んでみたい人には良い刺激になると思います。
後輩へのメッセージ ※受講学生アンケートより
海外に行ってみたいと思っていたら、ぜひこのプログラムに参加してほしいです。基本的にかかるお金は航空券のみで生活費も食費もほとんど掛からない点で金銭的負担は非常に少ないように感じました。また、2週間という中で素晴らしい経験ができるのもこのプログラムの特徴です。
担当教員からのメッセージ
感想を読んでみて、この科目の意図することが十分に伝わったことがわかって嬉しく思います。最初のガイダンスで説明した通り、この科目のねらいは次の通りです。
●海外留学への心理的バリアを下げる:「まずは行ってみる」→長期の海外経験への第1歩
●専門の軸足をしっかり持って参加:専門の視点でものを見ると一般人(観光)とは違ったものが見えてくる→自分の専門を高度化するきっかけ
●国際語としての英語は日独双方にとって外国語:どうやったら伝えられるかの相互努力→さらなる英語学習への動機づけ
2024年度は逆にドイツ・マグデブルグ大学から学生が「異文化と技術」(夏の学校)のためにやってきます。ぜひこの夏の学校に参画して、逆に日本の技術や文化を外国人に説明する経験を積んでください。
海外での体調不良は大きな心配事ですが、必要な常備薬(解熱剤、キズ薬など)や体温計、ばんそうこう、さらには新型コロナの検出キット等は教員が持って行きました。必要に応じて使ってください。
なお、一つ訂正があります。引率した清水教員は機械系ではなく、化学システム工学プログラムです。旋盤やフライス盤を頻繁に使い、TIG溶接もしたことがありますが、それでも化学系です。今回は残念なことに化学システム工学プログラム長の仕事があって早く帰らざるをえませんでしたが、新潟工科大の学生を連れて同行した新潟工科大の先生(新潟大出身で新潟大で勤務したこともある先生)が最後まで一緒にいてくれて、常に連絡が取れるような体制となっていました。