この記事を読んでくださっている皆さん、
皆さんは工学部と聞いてどんなことをイメージしますか?
おそらく、機械工学、航空宇宙、建築や土木などのイメージが浮かんできたのではないでしょうか。
ここ新潟大学では、そのようなメジャーな分野だけでなく、工学×芸術という珍しい分野についても学び、地域で実践できる専攻と授業があります。今回は、そんな新潟大学の特色を感じられる授業についてご紹介します。
工学部の人間支援感性科学プログラムには、「芸術プロジェクト表現実習」という、工学と芸術表現とを融合させた実践を行う授業があります。
これらの授業では、「工学的思考をもって芸術表現に取り組む」というねらいのもと、学生各自が学んできたことを活かして考えた企画・プロジェクトを実際に制作し、多くの地域住民の方が来場するアートイベントに出展します。
受講生は1人またはグループで作品を制作しますが、今回、11月2日・3日に新潟市西区で開催された「第12回 西区アートフェスティバル」に、その作品が出展されました。
この記事では、そのアートフェスティバルで取材した受講学生の皆さんの作品や得られた学びについて紹介します。

工学部3年の岩淵さん、児玉さん、清水さん、關さんが制作したのは、会場でひときわ大きく、存在感を放っていた「夢幻の花」という作品でした。
作品天井から釣り下がった柔らかく光る花々が暗闇に浮かび上がり、幻想的な空間を作り出していました。内部に貼られたミラーシートが実寸以上の奥行きを感じさせ、中に入ると、センサーが人や振動を感知し、花光の色が変わる演出になっています。
幻想的な空間を感じられる「夢幻の花」を、来場者の方々は写真に撮ったり触れたりして楽しんでいました。
制作者の一人である關さんは、「3か月以上の時間をかけてこの作品を作ってきましたが、今回のアートフェスティバルの初日に初めて完成形を見たんです。そこで、この忙しかった3か月間が報われたような気がしました」と、完成形を見た時の達成感を話してくれました。
「制作期間中は、短い時間でプログラミングをやりつつ、木材を切ったり、電飾や花飾りを取り付けたりと過密なスケジュールでした。でもこの2日間、作品やそれを見てくれる方々との交流を通して、今は達成感と満足感を感じています。制作期間中は “作品を完成させなければならない” というプレッシャーがありましたが、共に頑張る仲間がいてくれることは心強かったです」と、この授業を振り返って話を聞かせてくれました。
最後にこれから大学受験を控えている高校生へのメッセージをお願いすると、「工学と芸術の融合分野を学べる大学は少ないのですが、ここではその両方の楽しさを経験できます。二つの分野の魅力を学べるのが、この授業の良いところだと思います」と教えてくれました。

工学部4年の佐藤さんは、入学当初、新潟大学で芸術と工学の融合分野が学べることやそのようなプログラムがあることは知らなかったそうです。しかし、様々な授業を受講する中でそうした分野に興味を持ち、人間支援感性科学プログラムに進みました。
そんな佐藤さんが制作したのは、飛び石に見立てた板を踏むと板の下がぼうっと光る、風情と楽しさが感じられる作品です。
佐藤さんにこの作品を作ろうと思ったきっかけを尋ねると、「幼少期に感じていた、足元にあるもの全てが宝物に見えていたような、ワクワクする気持ちを思い出してみてほしかったんです」と、教えてくれました。
今回のアートフェスティバルは、佐藤さんにとって自身の作品を展示する2回目の場でした。
佐藤さんは、「このように(学外で)展示会をすると、工房で作っている時には想像していなかったことがたくさん起きます。例えば、これは踏んで楽しんでほしい作品なのですが、遠くから眺めるだけで次に行ってしまったり、小さい子はうまく飛び石の真ん中に足を置けず、敷石がういてしまったりとか。でも、そういったことが起きるたびに改良点が見つかり、刺激をもらえます。なので、予想外のことが起きるのはすごく嬉しいです。予想外のことが起きたり、予想外の声を聞いたりできると、それが自分の作品をより良くする糧になるので、どんどん(参加者の)素直な意見が聞きたいですね」と、展示することの意味やその良さを話してくれました。
「これからまた、今回の展示会で得た意見をふまえて改良を加えていく予定です」と、今回のイベントでの経験を次に繋げる姿勢がとても格好よく見えました。

今回取材した「芸術プロジェクト表現実習」は、光や動きを演出するプログラミングはもちろん、見る人の楽しさや心に響くデザインを考える芸術的視点もあり、まさに工学と芸術、両方の分野の知識・経験が感じられる授業でした。
この記事を読んでいる高校生の皆さん、こうして工学と芸術の融合分野を学び、それを地域・社会の中で表現していくという大学生活も、ぜひ選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
【本件に関するお問い合せ先】
学務部教務課連携教育支援事務室
Email renkeikyoiku(at)adm.niigata-u.ac.jp
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